90年代終わり~2000年代前半にインターネット上の面白さが集合していたのが巨大掲示板で、その後Twitterにそれが移動して「そこに行けば面白いものが見つけられる」という漠然とした感覚があった。大雑把に言えばそんな感じではないだろうか。地方出身の僕からすれば、周囲に娯楽がなく、どんなに退屈でも、この社会には知識を膨大に蓄えている人や、無名でも優れた創作をしている人、鋭いユーモアを持っている人がいるのだという救いがインターネットだった。いつの間にか、圧倒的に気軽な方法で、アルゴリズムの中で面白いものと出会うことができるのがSNSになった。書籍やアニメ、映画が面白いのはずっと変わらないけど、それらを見つけるためにSNSがあった。
近頃ロケットを飛ばしている彼の名前を挙げるまでもなく、SNSが良きインターネット、そして面白さの宇宙に飛ぶための発射基地だった時代は終わり、エンジンからもくもくとフェイクが立ち上がるのを遠くから見ている時間が増えた。かつて集まっていた面白さは解散して、それぞれの場所で暮らしはじめた。
面白さと出会うために書店に行き、映画館に行き、美術館を訪れ、友達とアニメの話をするために街へ出る決心はついた。では、自分が書店(本屋フォッグ)として、誰かの目的地になるためにはどうしたらいいだろう。既存のSNSによる広報に、きっと未来はない。まだかろうじてアルゴリズムが偶然の出会いを作ってくれている今のうちに、わざわざ訪れたい拠点のようなものをインターネット上に築きたい。同時に、街にも築きたい。
ここまで書いたことが言葉になるよりも前に、このHPを作っていたことは幸運だった。SNSが廃れても、HPはしばらく残るだろう。ここを拠点にしよう。膨大な広告やスパムを見なくても、HPを見に来れば本屋フォッグの今が分かる。わざわざ検索しないと来ることができないけど、それだけの甲斐がある場所にしよう。Youtube、note、X、Instagram、Threads……からこの場所を知ってもらおう。ゆるやかに、SNSやnoteから離脱していこう。そして、ここにある物をいつか束ねて綴じて、紙の本にしよう。